Project Data
- Head and research: Toru Tomabechi
- Funding: ÖAW
- Cooperation: China Tibetology Research Center (Beijing)
- Duration: 2003–2010
Two Sanskrit commentaries on the Pañcakrama
伝統的に龍樹 (Nāgārjuna) に帰せられる密教文献『五次第 (Pañcakrama) 』は、インドおよびチベットの仏教において多大な影響力を持ち、その重要性を反映して インド・チベットにおいて多数の注釈が著された。しかし、それらのうち、従来サンスクリット原典が公刊されているのは Parahitarakṣita および Muniśrībhadra の手による二種の Pañcakramaṭippaṇī のみであった。
近年、中国蔵学研究中心 (CTRC) に所蔵されるチベット自治区発現サンスクリット写本コピーのなかに、さらに2種の『五次第』注が含まれることが判明した。 すなわち、Samayavajra作 Pañcakramapañjikā、そして Abhayākaragupta作 Pañcakramatātparyapañjikā Kramakaumudī であるが、この両者ともこれまでは チベット訳を通してのみ参照可能であった。これらの注釈は、とりわけ以下の 点で重要と言える:
- Samayavajra 注は、『五次第』解釈の歴史において比較的初期に属する。 本注釈は『五次第』の文献伝承およびその解釈史における初期の 状況を検証するに資するものと言える。
- Abhayākaragupta は、比較的後代に属する著名な学者であり、彼の他の著作におけると同様『五次第』注においても、インド密教に関する該博な知識を披瀝し ている。また、本注釈には彼の手になる他の著作—例えば、Āmnāyamañjarī など—への言及が見られるが、このことは本注釈が、Abhayākaragupta の手による一群の 文献を理解する際に重要な手がかりの一つとなることを示す。
本プロジェクトは、上記二種の注釈を、中国蔵学研究中心所蔵の写本コピーに 基づいて翻刻および校訂することを目的とする。その成果は、"西蔵自治区梵文 文本系列双書"(STTAR)の一部として公刊の予定である。
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